これまで認知症には、これといった治療がないとされてきました。そのために介護を中心とした世話が、最も重視されてきたのです。ところが、さまざまな機関や組織が、日々治療法の開発に向けて勢力を注いでいます。

はたして、どの程度の効果が期待できるのか、今後の治癒に向けての見通しはどうなのかなどをまとめました。

認知症の種類

三大認知症といわれるものがあります。アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型の3つを言います。

アルツハイマー型は、脳に特殊なタンパクであるアミロイドβやタウなどが凝集し、神経細胞が変性して、死滅してしまう病気です。

今のところ病気を治癒させる薬はありませんが、新しい治療法の開発はアルツハイマー性の疾患に対するものが主です。

脳血管性の疾患は、脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳細胞が死滅してしまうものを言います。こちらは、血管障害の薬がよく処方されます。

レビー小体型は、レビー小体というタンパク質が集まって、脳に障害が起こる疾患です。こちらは、アルツハイマー型用の薬に少し効果が認められるので、処方されることがあります。

新薬開発の現状

新薬の開発が盛んに行われているのは、アルツハイマー型認知症に対してです。現在は、症状の進行を抑えるものが中心ですが、開発中の薬は病気の治癒を目的としたものです。

このタイプの疾患の原因は、アミロイドβやタウなどのタンパク質だとわかっているので、これらの凝集をいかに防ぐかがポイントになってきます。

それが可能になれば、脳細胞の変容から、委縮、死滅という流れをストップすることも可能です。イギリスでは、タウの蓄積を抑える新薬が開発寸前にまで来ています。

もしかしたら、アルツハイマー型の疾患を改善する働きが期待できる可能性もあります。これ以外にも、iPS細胞を使った認知症薬の開発も話題になっています。脳細胞の再生効果が出たという実験もあります。

新薬開発はどう行われるか

認知症の薬が開発されるまでには、10年以上の年月がかかります。実験や検証を何度も重ねて、初めて実用化されるのです。初めのうちは動物実験が主で、徐々に人間を対象とした治験に移っていきます。

治験では、健康な人に処方することから始まり、次第に症状の出ている人にも試してもらうことになっていきます。治験に伴うデメリットもありますが、これらを経て、効果があることが実証されれば、新薬が日の目を見ることになります。

現在も治験が進行中で、1日でも早い開発が待たれています。