腸は第二の脳とも呼ばれている器官です。やる気を感じさせるドーパミン、安らぎを感じさせるセロトニンといった神経伝達物質は、腸で90%が生成されています。
これが脳に運ばれて作用します。これらの物質が不足するとうつ病や認知症のリスクが上がると言われています。
便秘が認知症の原因になる
便秘の人が全員認知症になるというわけではありませんが「認知症は腸から始まり脳に至る」という、有識者の意見もあります。
この点はまだ解明されていませんが、便秘になると腸の働きが悪くなり、神経伝達物質の合成量が減ってしまうことは確認されています。
大学の名誉教授らが行った研究では、健康な高齢者と比べてアルツハイマー病を発症している高齢者は、腸内の善玉菌が少なく、悪玉菌が多い傾向にあることが報告されています。
腸内細菌のバランスが大切
人間の腸内には、100兆個以上の腸内細菌が棲み分けています。体によい影響を与えてくれる善玉菌、悪い影響を与える悪玉菌、そのどちらでもなく優勢な方につく日和見菌の3種類です。
この腸内細菌のうち、注目すべきは日和見菌です。善玉菌が多くなって優勢になると日和見菌が味方につくので、腸内環境が改善します。
逆に、便秘になると悪玉菌が優勢になり日和見菌は悪玉菌に加勢して、腸内環境が悪化します。便秘になると免疫力が低下したり、栄養の吸収率が悪くなったりといった悪い影響が出てきます。
神経伝達物質の合成に必要なビタミンB群、トリプトファン、鉄分といった栄養素をたくさん摂取したとしても、腸で吸収できないのでは栄養不足で認知症が起こりやすくなります。
活性酸素も影響する
さらに腸内に悪玉菌が増えると、活性酸素が大量発生します。活性酸素は老化を早めるほかに、脳細胞を酸化させて脳神経にダメージを与えてしまいます。
高齢者に便秘が多い原因は、若いときに比べて食べる量が減ったり、水分が不足していたり、筋力が衰えることが原因です。
お通じを良くするためには、少量でも便のかさを増やせる食物繊維を積極的にとったり、水分をこまめに補給する、といったことが大切です。
筋力は腹筋や背筋を鍛えておきたいところですが、無理に筋トレをしなくても普通に歩くだけでも筋力の低下は防ぐことができます。
食事では、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的に取り入れるようにして、腸内の善玉菌を増やすようにするといいでしょう。認知症予防のためには腸内環境を整えることも重要です。