認知症は、記憶や学習を司る脳神経である海馬がダメージを受けることが原因と言われてきました。
しかし、最近では海馬よりも先に嗅覚を司る嗅神経がダメージを受けることがわかってきています。
香りの力
嗅覚から過去の記憶がフラッシュバックする心理現象を、プルースト効果といいます。五感のうち、嗅覚だけは大脳新皮質を経由せずに、大脳辺縁系へと直接伝達されます。
大脳新皮質が考えるなどの理性的な感情を司るに対して、大脳新皮質は古い脳で喜怒哀楽などの感情や食欲といった本能的な行動に働きかけます。
なので、カレーの香りを嗅いで給食の時の思い出をフィードバックするような記憶は、他の記憶に比べて強く残りやすいです。
認知症にハーブやアロマを使う
嗅神経は他の神経に比べて再生力が高いのが特徴です。適切な香りで刺激してあげれば、機能が回復する可能性があります。
認知症を改善させるには、アロマやハーブで嗅覚の活性化(オン)と沈静(オフ)のスイッチを繰り返し与えてあげることがポイントです。
ニオイを感じる嗅神経が活性化すると、それとつながっている海馬も活性化します。
アロマやハーブを利用する理由は、ヨーロッパなどを中心に世界的に使われていて安全性が高いこと、香りの成分が高いので嗅神経を効率よく刺激できること、の2つです。
予防や改善に使えるアロマの種類
認知症の予防・改善効果が報告されているのは、次の4つの香りです。1つ目はローズマリーで、若返りのハーブとも呼ばれています。血行促進や新陳代謝、集中力のアップや記憶力の向上に役立ちます。
2つ目はレモンで、気持ちの切り替えに向いています。リフレッシュして気分を高揚させてくれます。
3つ目はラベンダーです。ラベンダーに含まれている酢酸リナリルという成分に、神経を鎮める作用があります。深いリラックスを与え、安眠効果が期待できます。
4つ目はオレンジ・スウィートです。甘くフレッシュな香りで、子供からお年寄りまで人気が高い香りです。柑橘系には殺菌効果がありますし、レモンと同様に気持ちをリフレッシュさせてくれます。
アロマを使う時には必ず精油(エッセンシャルオイル)を使いましょう。
化学合成された香りだと、植物由来成分のニオイではないので効果が期待できません。
昼間は交感神経に働きかけるローズマリーやレモンの香り、夜はラベンダーやオレンジ・スウィートなどのリラックスして副交感神経の働きを高める香りを使いましょう。